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気持ちを整理整頓

猫と居候

実家ではペットが飼えないので、犬を飼っていた親戚の家に行くことが楽しみだった記憶がある。

 

ある時、犬たちがいる場所に一匹の野良猫が住み着いたと聞いた。
子猫だから鉄格子の間を括りぬけ、犬たちがいる小屋の中に出入りしているらしい。
優しいわんこたちは子猫に危害を加えることもなかったみたい。

 

時が経ち、犬たちを家で飼えるようになったので連れて行こうとした時、犬が乗り込んでいる車にその猫も乗ってきたらしい。
そうして、正式に親戚の家の飼い猫となった。

 

 

大学時代、私は親戚の家に居候した。
そこで初めて「猫のいる生活」が始まった。
家に帰ればペットがいる生活、けど想像とはちょっと違った。
4年間で少しは懐いてくれるのかなと思っていたけれど、そんなことなかった。

 

うちの猫はすごくビビりだから、インターホンが鳴ればすぐ二階に駆け上がるし、
元気のいいわんこが家に来たら、面白いくらい腰が引けてて忍び足で歩く。
触られてほしくないだろうに、私が触ろうとし続けてたらパンチをしたり噛んでくる、けど全然痛くない。

 

うちの猫はすごくマイペースだから、私が寝ようとしてもベットの上から動こうとしないし、
夜中に「部屋の扉を開けろ」と言わんばかりに爪を立ててガリガリ音を鳴らすし、
そのまま部屋に居座る時もあればすぐに出ていく時もある。
私が深夜までレポートをカタカタ打っている傍ら、スヤスヤと寝ていたこともあったね。

 

うちの猫は開けたての猫缶、ホタテ、エビなどを好んで食べる。
私たちの食費よりも高いね~!と何回言っただろう。
氷下魚が私たちの食卓に出たときは、くれと言わんばかりに近くに寄ってくる。普段は寄ってこないのにね。

 

うちの猫は寝ぼけている時とかに撫でさせてくれたけど、喉も鳴らしてくれたことはなかったし、抱っこもほとんどしたことない。
無理やり距離を詰めてツーショットは撮った。

 

この前親戚の家に行ったとき、扉を開けた瞬間君が玄関で座っていたけれど、きっと「唯一懐いている親戚の一人」が帰ってきたのだろうと期待してそこで待ってたんだよね。
私の顔を見た瞬間すぐにリビングへ戻っていく姿は今でも思い出して笑える。

 

別の家の猫ちゃんに会った時、普段知らない人には近づかないという猫ちゃんが触らせてくれたことがあった。
その時に「もしかしたら猫の匂いが付いているからかもね」なんて話をした。
居候でなくなってからしばらく経つし、頻繁に会いに行っているわけじゃないのに、まだ残っているかもしれないということが嬉しかった。

 

うちの猫は家の中がバタバタしていても、ちょっと離れたところで寝ているし、

ご飯が食べたくなれば鳴いてエサを求めるし、

窓を開けろと鳴き、しばらく窓際に居座ることもあればすぐに去っていくこともある。
辛かった時に私の近くに来て、寄り添ってくれたわけでもなく、
ご飯が思うように食べられない私の横でホタテをバクバク食ってたし、
じいちゃんが亡くなった時もいつもと変わらずうろうろしたり寝ていたね。

 

“我慢”という言葉から一番かけ離れていて、“マイペース”という言葉がとても似合ううちの猫


私が無理やり顔を近づけると必ず避けるのに、数日前に会いに行ったときは私がどんなに近づいても動くことなく、ただじっとしていたね。
あんなに辛そうにしている姿を初めて見たから本当に胸が痛かったよ。

 

なんでこんなに悲しいのか考えてみたけれど、大学生時代の居候先での生活はとても気楽だったし大切な記憶、それには君が必要不可欠だった。君のおかげで笑顔だったことが本当に多かったから。

 

あんた、あんな晴れ渡った日にお空に行ったみたいだけど、これからどうするの?生きていた間だって至れり尽くせりの生活だったのに、これからどうやっていくの?それに、あんなに懐いていた人の元を離れることなんてできないでしょ。しばらくはお家の中で今までと変わらずに過ごしてなよ。ホタテとかは食べられないかもしれないけど、ぐーたら寝てな。

 

大切なうちの猫、また会おうね。